このページでは、PMDG737NGXのオートパイロットのうち、縦方法の操縦をコントロールする「ピッチモード」について、概要を解説します。
ピッチモードの種類
PMDG737NGXのオートパイロットのピッチモードには、以下のような種類があります。
- VNAV
- V/S(Vertical Speed)
- ALT HOLD(Altitude Hold)
- ALT ACQ(Altitude Acquire)
- LVL CHG(Level Change)
以下、それぞれについて概要を解説します。
VNAV
VNAVモードは、FMCの設定・計算に従って上昇、水平飛行、降下するピッチモードで、最も効率的に飛行できるモードです。VNAVがエンゲージされると、FMAのピッチモード表示には「VNAV SPD」「VNAV PTH」「VNAV ALT」のいずれかが表示されます。
VNAV SPD
「VNAV SPD」は、VNAVで上昇または降下している時に見られるモードで、FMCに設定された(「CLB」「DES」ページ)スピードで上昇・降下するよう、ピッチがコントロールされます。
ポイントは、スロットルをコントロールするのではなく、ピッチをコントロールするということです。
一定のスピードに保つということを考えると、(車の運転などから)スロットルのコントロールをイメージしてしまいがちですが、航空機の場合は主にピッチをコントロールすることでスピードを制御します。
VNAV PTH
「VNAV PTH」は、巡航中または降下中に見られるモードです。
VNAVを使って上昇し、目的の高度に到達すると、ピッチモードは自動的に「VNAV PTH」モードに変わります。
VNAVを使って降下するとき、「VNAV SPD」と「VNAV PTH」の2つのモードがありますが、通常は「VNAV PTH」で降下が行われます。「VNAV PTH」を使った降下は、もっとも効率的(経済的)な降下で、FMCが計算した降下パスに沿って降下するようにピッチがコントロールされます。風の影響などで予定パスから外れた場合、スロットルのコントロールも提供されます(なるべく降下パスに沿うようにコントロールされる)。
「VNAV PTH」モードで注意が必要なのは、オーバースピードのコントロールはされないことです。FMCのターゲットスピードより10ノット以上増速すると、FMCに「DRAG REQUIRED」というメッセージが表示されます。その場合、スピードブレーキを使用するか、スラストを低下させる等の対応を行って、スピードを落とす必要があります。
T/Dポイントを過ぎてから降下を開始する場合や、「VNAV PTH」で降下中に「SPD INTV」(Speed Intervention、パイロットによるスピード設定の介入)が行われた場合などに、自動的に「VNAV SPD」モードに移行します。
「VNAV PTH」で降下中、グライドスロープをキャプチャすると「G/S」モードに移行します。
VNAV ALT
MCP ALTITUDEに設定している高度でレベルオフした時、FMCに設定している高度と違う場合「VNAV ALT」モードに移行します。例えば、FMCに設定している高度より低い高度がMCP ALTITUDEに設定してある場合です。
V/S(Vertical Speed)

V/Sモードは、【V/S】ボタンをPUSHするとエンゲージされるピッチモードで、MCPのALTITUDEで設定されている高度に向け、「VERT SPEED(Vertical Speed)」で設定された率で上昇・降下するモードです。
上のキャプチャーの例では、25,000フィートに向け、毎分700フィートの上昇率で上昇中です。
「VERT SPEED」に設定可能なレンジは「-7900フィート~+6000フィート」です。
MCPのALTITUDEで設定された高度に到達すると、自動的にレベルオフします(「ALT HOLD」モードに移行)。
V/Sモードの注意点は、スピードのプロテクションは提供されないことです。
V/Sモードにすると、オートスロットル・モードは「MCP SPD」に変わりますが、オートパイロットは、あくまで「VERT SPEED」に設定された上昇・降下率の維持を優先しようとするので、MCP SPEEDに設定されたスピードは維持されません。
急いで上昇・降下したいときには便利なモードですが、オーバースピードになったり、失速速度に近づいていったりしますので、V/Sモードを使用するときは、速度への注意が必要です。
ALT HOLD(Altitude Hold)

「ALT HOLD」モードは、現在の高度を維持するピッチモードです。
ポイントは、ALT HOLDボタンをPUSHした時の高度を維持するように働く、ということです。
MCP ALTITUDEと同高度を飛行中に「ALT HOLD」をPUSHしたとき
ピッチモードは「ALT HOLD」モードに移行し、FMAのピッチモードに「ALT HOLD」と表示されます。「ALT HOLD」ボタンのライトは点灯しません。
この状態で、MCP ALTITUDEの高度を変更すると、「ALT HOLD」ボタンのライトが点灯しますが、航空機の高度は変わりません(ボタンをPUSHした時の高度を維持する)。
MCP ALTITUDEに設定した高度に遷移するには、「LVL CHG」か「V/S」を使います。
MCP ALTITUDEに設定した高度に向かって上昇・降下している時に「ALT HOLD」をPUSHしたとき
ピッチモードは「ALT HOLD」モードに移行し、「ALT HOLD」ボタンのライトが点灯します。
ボタンをPUSHした時の高度を維持するので、再び上昇/降下するには、他のモードに切り替えます。
LVL CHG(Level Change)

「LVL CHG」モードは、巡航高度を変更するときに便利なピッチモードです。
MCPのALTITUDEに変更後の高度をセットして、「LVL CHG」モードをPUSHします。
「LVL CHG」モードで上昇する場合、スラストは「N1 リミット」まで進められ、ピッチはMCP SPEEDを維持するようコントロールされます。「LVL CHG」モードで降下する場合、スラストはアイドル(RETARD)まで戻され、ピッチはMCP SPEEDを維持するようコントロールされます。
目的の高度に到達すると、ピッチモードは「ALT HOLD」に遷移します。
ALT ACQ(Altitude Acquire)

ALT ACQモードは他のピッチモードと違う、ちょっと特殊なモードで、自動的にエンゲージされるモードなので、他のモードのようにMCP上にスイッチもありません(パイロットが意図的に選択できるモードではない)。
ALT ACQモードは、ピッチモードが「ALT HOLD」に遷移するときに、短い間だけエンゲージされます。
例えば、「V/S」モードでMCP ALTITUDEに設定してある高度に上昇・降下しているとします。目的の高度になると「ALT HOLD」モードに自動的に遷移しますが、「V/S」モードから「ALT HOLD」モードに移行する、ほんのわずかな間だけ、「ALT ACQ」モードになります。PFDを気にしていないと、表示されても気づかないかもしれません。
ALT ACQモードが、なかなか見ることができない理由の一つに「VNAV」モードがあります。
「VNAV」モードでMCP ALTITUDEに設定してある高度に上昇・下降する場合でも、目的の高度に到達する直前、オートパイロットは「ALT ACQ」モードになるのですが、FMAの表示は「VNAV」のままです(「ALT ACQ」と表示されることがない)。
ピッチモードの表示
PFDのFMA(Flight Mode Annunciator)に表示されます。

現在有効になっているロールモードは緑色で表示され、スタンバイになっているモードは白色で表示されます。モードに変更があると、10秒間上のキャプチャーのように「枠」が表示されます。
オートパイロット・ピッチモードの概要解説は以上です。
ピッチモードの挙動は、慣れないとなかなか難しいですね。管制を受けて飛んだりとか、気象を使ったりすると、「高度処理が間に合わない!」といった状況になることもあります。(その場合は、スピードブレーキを使いましょう。)
使用するモードについて、『何のコントロールが優先されて、何のコントロールが劣後になるのか(あるいは提供されないのか)』といった特徴を理解することがポイントです。