このページでは、PMDG737NGXのオートスロットルについて、概要を解説します。
オートスロットルは、パイロットが設定した速度・高度、オートパイロットからの情報等をもとに、「オートスロットル・コンピュータ」が、エンジンの推力を自動的にコントロールするシステムです。実機では、離陸の時など「TO/GA」スイッチをPUSHにすると、スロットル・レバーが自動的にスルスルと前方に動いていきますが、あれは「オートスロットル・コンピュータ」からの命令で、スロットル・レバーの下の空間にあるサーボモーターが、スロットル・レバーを動かしています。
オートスロットルの「モード」
オートスロットルには、以下の7つのモードがあります。
- ARM
- N1
- THR HLD
- FMC SPD
- MCP SPD
- RETARD
- GA
以下、それぞれについて概要を解説します。
ARM
ARMは、オートスロットル・システムがスタンバイ状態になっていることを表します。
例えば「オートスロットル・アーム・スイッチ」をONにした時、「ARM」モードに移行し、命令を待っている状態になります。
PMDG737NGXの付属マニュアル「FCOMv2.pdf」には、『オートスロットルが「ARM」モードにあるとき、パイロットはマニュアルでスラストレバーをセットできる』と書いてあるのですが、例えば、飛行中に意図的にARMモードにしても、スラストはマニュアルでコントロールできません。オートパイロットの高度設定などでもスロットル制御が実施されているからです。
もし、マニュアルでスラストをコントロールしたい場合、後述する「A/T ARM」スイッチをOFFにする必要があります。航空機が地上にあり、オートスロットルモードが「ARM」の場合、スラストは手動でコントロール可能です(タキシング中など)。
N1
N1モードにあるとき、オートスロットル・システムは、EECから送らてくる「N1の設定値」になるよう、エンジン推力をコントロールします。
EECは「Electronic Engine Control」の略で、FMCからの情報や機体のセンサーなどからの情報をもとに推力を計算し、「オートスロットル・コンピュータ」に信号を送るシステムです。
N1モードは、テイクオフ中(テイクオフ中の全てではありません)やクライム中に見られるモードです。
THR HLD
「THR HLD」は「Throttle Hold」を略したもので、テイクオフ中に見られるオートスロットル・モードです。
離陸滑走の最初、「TO/GA」スイッチがONになると、オートスロットルは一度「N1」モードになりますが、速度が84ノットを超えると「THR HLD」モードに切り変わります。
「THR HLD」モードは、スラストが離陸推力に達し、スラストレバーが固定されていることを表しています。離陸滑走中に、意図しない推力変化が起こることを防ぐために「HOLD」されるわけです。
離陸後、THR HLDモードは解除されます。
FMC SPD
「FMC SPD」モードのとき、オートスロットルは、FMCからのスピード指示を維持するよう動作します。
VNAVで巡航中のときなどに見られるモードです。
MCP SPD
「MCP SPD」モードのとき、オートスロットルは、MCPで設定されたスピードを維持するように働きます。
RJTT→RJOOのチュートリアルフライトでは、ファイナル・アプローチ中に見られたモードです。
RETARD
「RETARD」は、オートスロットルが、スラストをアイドルまで戻すときのモードです。
オートパイロットで降下を開始する時などに見られます。
GA
GAは「Go-Around」のことで、アプローチ中に「TO/GA」スイッチがPUSHされたときに設定されるモードです。
GAモードに切り替わると、オートスロットルはスロットルレバーを直ちに「Go-Aroundのために計算された推力」にセットします。
オートスロットルモードの表示
オートスロットルがどのモードにあるかは、PFDに表示される「FMA(Flight Mode Annunciation)」で確認することができます。

上のキャプチャーの矢印の部分に、オートスロットル・モードが表示されます。
オートスロットルの各モードのうち、「ARM」モードは白色で表示され、他のモードは緑色で表示されます。
オートスロットルのモードが変更になったときは、下のキャプチャーのように「緑色の枠」が10秒間表示されます。

オートスロットルをコントロールするスイッチ
パイロットが操作するオートスロットル関係のスイッチには、以下のようなものがあります。
「A/T ARM」スイッチ
MCPにある「A/T ARM」スイッチは、パイロットがオートスロットルの「入り・切り」をコントロールするスイッチです。

「ON」にすると緑色のライトが点灯し、適切なモードに移行します。
オートスロットル・コンピュータが、システムに何等かの問題を発見した場合、スイッチは自動でOFFになります。スイッチがOFFのとき、オートスロットルのサーボモーターには電力が供給されませんので、スロットルのコントロールは完全にパイロットに任されます。FMAのモード表示はブランクになります。
「A/T Mode Selector」スイッチ

MCPにあるオートスロットルのモードを選択するスイッチで、「N1」と「SPEED」があります。
オートスロットルモードが「N1」か「MCP SPEED」のとき、それぞれのスイッチに緑色のライトが点灯します(「FMC SPEED」モードの時、「SPEED」ライトは点灯しません。)
オートスロットルのモードはコンピュータによって自動的に選択されますので、このスイッチを操作してモードを切り替えることは通常無いでしょう(「N1」モードか「SPEED」モードにあるとき、それをカットオフすることぐらいですが、通常はやらない)。たとえば「FMC SPEED」モードで巡航中のとき、「SPEED」ボタンをPUSHしても「MCP SPEED」モードには移行しません(「MCP SPEED」モードに移行するには「VNAV」をカットする必要があります)。
「TO/GA」スイッチ

「TO/GA」(TakeOff/Go-Around)スイッチは、実機ではスラストレバーに付いていますが、PMDGでは上図の「隠しクリックスポット」がスイッチになります。
離陸の際、スイッチをPUSHすると、オートスロットルは「N1モード」に移行し、スラストレバーは離陸推力に進められます。
アプローチ中にスイッチをPUSHすると、オートスロットルは「GA」モードに移行し、「Go-around N1」推力にセットされます。これは、1分あたり1000フィートから2000フィート上昇できる推力です。また、ターゲット・エアスピードは、最大離陸重量で離陸する場合(フラップを使用)を元に計算されたスピードにセットされます。
ゴー・アラウンド中に、再度「TO/GA」スイッチをPUSHすると、スラストは「Go-around N1 Limit」推力(最大推力)にセットされます。
スラストモード
オートスロットルに関係が深い「スラストモード」について、ちょっと解説します。
スラストモードは、FMCによって計算される「N1 リミット」です。例えば、離陸の際、オートスロットルで離陸推力にセットされますが、その離陸推力(N1 Limit)を設定しているのがスラストモードです。
スラストモードの種類
PMDG737NGXのスラストモードには、以下の種類があります。
- TO : エンジンの定格出力を使用して離陸する。
- TO 1 : エンジンの定格出力の約90%を使用して離陸する。
- TO 2 : エンジンの定格出力の約80%を使用して離陸する。
- D-TO : 想定外気温を使用した、TOモード。
- D-TO 1 : 想定外気温を使用した、TO 1モード。
- D-TO 2 : 想定外気温を使用した、TO 2モード。
- TO B : エンジンの定格出力の約103%を使用して離陸する。
- CLB : FMCが計算したクライム推力。
- CLB1 : CLBの約90%のクライム推力。
- CLB2 : CLBの約80%のクライム推力。
- CRZ : FMCが計算した巡航推力。
- CON : 「Continuous」、持続可能な最大推力(緊急時などに使用されます)。
スラストモードの表示
スラストモードは、エンジンDUに表示されます。

上のキャプチャーの黄色い枠がスラストモードです。
オレンジ色の矢印は、ターゲットのN1 Limitです。
青色の矢印は、実際のN1です。
スラストモードの切り替え
スラストモードは、フライトの各シーン毎にFMCによって自動的に切り替えられます。
下のキャプチャーはクルーズ中のFMCの「N1 LIMIT」ページで、「AUTO」がアクティブになっています。

手動で他のモードに切り替えたい場合は、それぞれのキーをPUSHすれば切り替えることができます。
PMDG737NGXのオートスロットルの概要は以上です。