このページでは、オートパイロットの「CWS」「SPD INTV」「ALT INTV」について、概要を解説します。それぞれ、オートパイロットに対して、人間のパイロットが介入するモードです。
CWS
CWSは「Control Wheel Steering」の略で、オートパイロット中に操縦桿での操縦を有効にするモードです。

上のキャプチャーは「CWS」をエンゲージしたところです。PFDに「CWS R」「CWS P」と表示され、「CMD」の表示が「FD」に変わりました。
現在、操縦桿による操縦が可能です。「CMD」状態ではないので、オートパイロットは提供されていません(オートスロットルは提供されています)。
「CWS R」はロールの操縦が有効であること、「CWS P」はピッチの操縦が有効であることを表しています。
操縦桿から力を抜いたときの挙動
ピッチの力を抜いた場合、その時のピッチを維持します。
ロールの力を抜いた場合、バンク角が6度以下の場合は水平飛行に戻ります(バンクが0度に戻ります)。6度を超えていた場合は、そのバンク角を維持します(旋回を続けます)。
他のオートパイロットモードにしたい場合は、そのボタンをPUSHする必要があります。
CWSモードにしないで操縦桿を動かした場合

上のキャプチャーは、オートパイロットで飛行中、CWSモードにしないで操縦桿を大きく動かしたところです。
例えば、TCASから衝突回避指示が出た場合などですね。
PFDに「CWS R」「CWS P」と表示されています。「CMD」になったままですか、FMAのロールモードとピッチモードには何も表示されていないので、オートパイロットは提供されていません。つまりオートパイロットは自動で解除され、手動操縦に切り替わっています。
操縦桿から力を抜いた時の挙動は、CWSをエンゲージした場合と同じです。
だいぶ前の話しですが、操縦桿を動かし、オートパイロットが解除されたことに気付かず、墜落してしまう事故が発生したことがありました(シムじゃなく実機で)。
【事故の状況】
- 夜間のアプローチ中、ギアが出ないことに気付いた。
- オートパイロットでホールディングパターンを飛行するよう設定し、ギアの点検を開始した。
- パイロットは、知らないうちに操縦桿を動かしてしまった。そのためオートパイロットが解除された。
- キャプテン、ファースト・オフィサーとも、ギアの点検・修理に集中してしまっていたため、オートパイロットが外れたことに気が付かなかった。
- 機体は降下し、墜落。
この事故は、キャプテン、ファーストオフィサーの両方が、ギアの修理に集中してしまい、飛行の状態をモニタしていなかったことも大きな原因の一つですが、オートパイロットはこういう性質があるので、注意が必要です。
SPD INTV、ALT INTV
SPD INTVは「Speed Intervention」、ALT INTVは「Altitude Intervention」で、オートパイロットの速度、高度設定に、人間のパイロットが介入する機能です。いずれも「VNAV」で飛行しているときを想定しています。
「VNAV」で飛行している場合、速度や高度を変更するためには、FMCの設定を変更しなければなりませんが、忙しくてFMCの設定を変更する余裕がなかったり、面倒だったりするときに使う機能です。
例えばスピードを変えたいなら「MCP SPEEDモードにすればいいじゃない」という考えもありますが、「VNAV」は便利なので、なるべく外したくないですね。
Interventionは、VNAVモードを維持したまま、スピードや高度を変更できる便利な機能ですが、フライトシムではあまり(ほとんど?)使うことはないんじゃないかと思います。
SPD INTV
「SPD INTV」が実際にどう機能するか試してみます。
現在、下のキャプチャーのように、現在FL240、マッハ0.653、VNAV(FMC SPDモード)で巡航中です。

「SPD INTV」ボタンをPUSHしました。

上のキャプチャーのように、MCPの「IAS/MACH」に現在の速度が表示され、オートスロットルモードが「MCP SPD」変わりました。「VNAV」はエンゲージされたままです。
分かりやすいように、速度の表示をIAS(ノット)に切り替えた後、MCPの速度を「260」に設定しました。

上のキャプチャーのように、FMCとPFDのターゲットエアスピードが260ノットになり、減速が開始されました。「VNAV」はエンゲージされたままです。
MCPに設定した260ノットまで減速すると・・・

上のキャプチャーのように、260ノットを維持します。「VNAV」はエンゲージされたままです。
VNAVで設定している元の速度に戻りたいときは、もう一度「SPD INTV」ボタンをPUSHします。

上のキャプチャーのように、ターゲットスピードが元の「MACH 0.653」に戻り、増速が開始されました。もし、INTV速度に留まりたい場合は、FMCの速度設定を修正してINTVを解除すればOKです。
「SPD INTV」を使用すると、VNAVモードを維持しながら、一時的に速度を変更することができました。
ALT INTV
こんどは「ALT INTV」が実際にどう機能するか試してみます。「SPD INTV」の実験時と同じ状態でテスト開始です。

MCP ALTITUDEに25000フィートを設定し、「ALT INTV」ボタンをPUSHしました。

上のキャプチャーのように、ターゲット高度が25000フィートに変更され、上昇が開始されました。オートスロットルは「N1リミット」が自動的に設定されます。
25000フィートに到達すると・・・

上のキャプチャーのように、水平飛行に移りました。「VNAV」モードはエンゲージされたままです。
元の高度に戻るためには、MCP ALTITUDEを設定しなおして(24000フィートにして)、「ALT INTV」ボタンをPUSHします。
上記の例は、元のフライトレベルより上昇する場合でしたが、クルーズ高度から一時的に降下する場合「EARLY DESCENT」とみなされます。「EARLY DESCENT」とは、T/Dポイントより手前で降下を開始することで、FMCは「クルーズは終了し、降下を開始した」と認識します(FMCの「DES」ページで「DES NOW」をPUSHしたのと同じ)。
「ALT INTV」を使用すると、VNAVを維持したまま一時的に高度を変更することができますが、上記のような挙動があるのでちょっと注意が必要です。クルーズ高度変更の場合は、FMCのCRZ高度を変更して上昇・降下することもできます。
オートパイロット「CWS、SPD INTV、ALT INTV」の概要解説は以上です。